ゆけッ! やっせんぼ・とよちゃん!
残響時間計測実験 (2010年10月20日)
どして?
タイムドメインスピーカーを作成してからずっと「もっと良い音で聞きたい」と言う欲望が強くて(爆) 色々と試行錯誤をしています。 で、その中の一つとて今回部屋の残響時間を計測しました。
残響時間を計測したからといってスピーカーからの音が良くなるわけでは無いのですが、計測では部屋のインパルス応答を計測するので、そのインパルス応答の逆フィルタをFIRのカーネルとして使用して オーディオプロセッサに処理させてようと考えたのです。 まぁ、そちらが主目的で 今回の残響時間計測はおまけですね。 オーディオプロセッサについては、後ほどレポートを書きます。
方法
残響時間の計測の基本的な方法は、
って感じです。
インパルス応答を計測するには色々と方法があるのですが、今回は Time Stretched Pulse (TSP) というスウィープ音を使用して計測する方法を使いました。
Schroeder 積分というのは、かいつまんで言うと「ある時間 T での積分値は、インパルス応答の振幅を二乗した値を t=T から t=∞ まで足し合わせたもの」って感じです。 要するに、「ある時間 T に残留している音波の全エネルギー」って事ですね。 この積分値を時間軸にプロットすると残響減衰曲線となるのです。
残響減衰曲線は ある時間 t で残留している音波のエネルギーを示していますので、この減衰具合をみると 部屋がどのくらい反響するかって事が見えるんですね。
Time Stretched Pulse (TSP)
TSP は何かと扱いにくいインパルス信号の代わりに開発された信号で、時間反転した信号が自身の逆信号って性質を持っています。 ここで言う「逆」って意味は 畳み込みを行うと 単位信号、つまりインパルス信号になるという意味です。
実際の TSP は、右図のようなものです。上が波形全体、下が最初の部分を拡大したものです。 低音から高音へとスウィープしていく音です。 Time Stretched Pulse という言葉はあまり適当では無いので、最近では Swept Sine と呼ばれているみたいです。
インパルス応答
TSP を使用したインパルス応答の測定は、
という方法をとります。
3 の理由は、S/N 比を大きくするためです。
右図が実際に録音した TSP に対する私の部屋の応答音です。 左右のスピーカーからそれぞれ20回 TSP を発信して ピンマイク audio-technica AT9903 で録音しました。 マイクの位置は、測定したインパルス応答は後でオーディオプロセッサのFIRフィルタに使用するので、実際に音楽などを聞く時の頭の位置に設置しました。 理由はオーディオプロセッサの報告書に書きます。
上の波形にTSPの逆信号を畳み込むと インパルス信号に対する部屋の応答、つまりインパルス応答を得ることができます(右図)。 最初にインパルスに対する反応があった後 2つの鋭いインパルス波形がありますね。 これはスピーカー近くのガラス戸や部屋のコンクリート壁からの反射音を示しています。
残響時間
上のインパルス応答を Schroeder 積分して残響減衰曲線を計算したのが 右図です。 残響時間を推測するための直線は、通常曲線が -5dB 落ちたあたりから -35dB 落ちるあたりの区間でフィットするのだそうです。 で、直線が -60dB ラインと交わる時間が残響時間の推測値として定義されます。 私の部屋の場合、およそ 0.275秒 ということになります。
プロの音響屋は、実際にはインパルス応答を複数の周波数帯に分けて処理して、周波数バンド毎の残響時間を計算します。 これは周波数ごとに残留時間が異なるからです。 私の場合、それほど厳密な情報は必要ないので、全帯域の値のみにしておきました。