ゆけッ! やっせんぼ・とよちゃん!

スピーカーの自作記録 その3
【新しいエンクロージャー製作編】
(2015年4月20日)





なんで?

二年ほど前に 振動ユニットを DIY AUDIO SA/F80AMG から PARC Audio DCU-F131W に交換したのですが、二年ほど前のレポートの最後にも書きましたが、DCU-F131W は指向性が強くて ユニットの正面中心軸上で聴くのが一番なんです。 それに気がついた時から 新しいエンクロージャーを作るというプロジェクトを発動したのでした。

エンクロージャーの材料はアルミ板と決めていたのですが、そうするとちょっと厄介な問題が起こるんですよ:

  1. スピーカーユニットを収めるバッフルの穴をどうやって開けるか
  2. アルミ板同士をどうやって組み立てるか

1. は、アルミ板を加工してくれるところがあるので頼もうと思って見積もりをもらったのですが、アルミ板4枚に丸い穴を開けるだけで 4万円もかかると言われました。 というわけで、結局 根性で自分で加工することにしました。 まぁ、この部分が一番大変かなぁ。 自分でやると言うことを決心するのに、半年かかりました。( ̄∀ ̄)

2. は、アルミ板同士をどうやって繋ぎあわせるかということです。 この方法を決めるのに、実質1年かかりました。 木材の板同士なら鬼目ナットを打ち込んでボルトで止めるのが一番ですね。 アルミ板だと、鬼目ナットを打ち込んでも、強くテンションをかけると 抜けちゃうんじゃないかと心配だったのです。 で、色々と調べた結果、ムラコシ精工さんのオンラインショップで「ジョイントコネクター 丸ナット」という良いものを見つけました。 これは、組み立て式のベット等に使われていて、荷重がかかってもすっぽ抜けたりしない仕組みになっています。 今回のにぴったりです。




振動ユニット

振動ユニットは、2年前に買った PARC Audio DCU-F131W です。 低域の再生も良くて、中域が上がっているので 明るい音がします。

今回製作するスピーカーでは(も)、振動ユニットはエンクロージャーに固定しません。 振動ユニットが空気を押した時の反作用によるユニット自身の振動は、接着してあるダンベルで抑える仕組みになっています。 まぁ、アルミのエンクロージャー自体の重量が重いので、固定してもなんも問題ないんですけどね。。。もうダンベルを接着しちゃってるもんで。。。( ̄∀ ̄)

振動ユニットとダンベルの接着については前回のレポートを参照してください。




設計図

右の図が、スピーカーの断面図です。 灰色の部分が DCU-F131W とダンベル、青系の部分がアルミ板、緑の部分が 振動ユニットとエンクロージャーの間に入れる緩衝材です。 フロントのバッフルは アルミ板を2枚使っています。



右図が、詳細な寸法です。 全体のサイズは、会社にある Meyer Sound の HD-1 を参考に各面の寸法比を決めて、HD-1 より一回り小さくしました。 このサイズが、自分の部屋に置いてもなんとか邪魔にならない 限界ですね。(⌒〜⌒)

側面の板を 20mm 厚にして、ボルトを脇から通せるようにしました。 その他の面は、基本 10mm 厚にして、側面の板にボルトで止める仕組みです。



右の写真が、ムラコシ精工さんで見つけたボルトとナットです。 ちなみにサイズは M6 で、ボルトの長さは前面のバッフルに 35mm のものを、その他の部分に 30mm のものを使用します。



右の図のようにしてアルミの側板(20mm厚)とその他のアルミ板(10mm厚)を接続します。 右図は、側板と天板の例です。アルミ板は青色系の部分、ボルトがオレンジ色の部分、ナットが灰色の部分、黒の部分が開けなければならない穴です。




材料・工具等

右の写真が、購入したアルミ板(A5052)です。 持ってみて、以外に重いのに軽く引きました。( ̄ロ ̄|||) 片ユニット分だけでも、持ち上げようとすると腰をやっちゃいそうです。 「あれ?」と思って重さを計算してみたら、片ユニットだけで 19kg あることが判明しました。 発注する前に試算しておけば良かったです。( ̄∀ ̄) 振動ユニットが 1kg、接着してあるダンベルが 4kg あるので、完成したスピーカーの重量は 24kg ですよ。 マジで二度引きしました。( ̄∀ ̄;)はは



アルミ板は、とくきんさんで購入しました。 下の表が、アルミ板の寸法と価格です。

部位 アルミ材質名 寸法
長辺[mm]x短辺[mm]x厚さ[mm]
枚数 単価(円) 小計(円)
前面(厚)・背面 A5052 340x250x10 4 2,725 10,897
前面(薄) A5052 340x250x5 2 1,755 3,510
側面 A5052 320x280x20 4 5,882 23,528
天板・底板 A5052 280x250x10 4 2,314 9,256
合計 47,191
消費税 3,775
送料 2,635
大合計 53,601


アルミ板の他に、今回は、ハンドドリル RYOBI CDD-1020 を買いました。 Amazon で 6,500円 でした。 値段にしては、性能が良いです。




製作工程 〜バッフル板の穴開け〜

まずは、前面のバッフル板のユニットを入れる穴の加工です。 とりあえず中心位置に直径 1mm くらいの穴を開けます。



ダイソーで買ったコンパスカッターで開けたい穴の直径の円を罫書きします。



罫書いた線の内側に直径 6mm くらいの穴をできるだけたくさん開けます。 ここで失敗して、罫書いた線よりはみ出しちゃったら元も子もありません。 精神を集中して行います。



開けた穴を繋ぐように コーピングソー(Coping saw)で切っていきます。 この工程は結構つらいです。(;д;)



切り終えると こんな感じです。



続いて、ヤスリ掛けです。 粗めのヤスリでガシガシ削っていきます。 なかなか辛い作業です。(´△`)



突起がなくなったら 細かいヤスリに変えて微調整をしていきます。 茶色の丸い板は、穴のテンプレートです。 この板を開けた穴に通しながら 目的の直径に広げつつ、穴が真円に近くなるように微調整していきます。 ここの作業は、気長にのんびりやるのが 失敗しないコツです。



完成です。 アルミ板を2枚使って 穴の段差を作っています。 ちなみに、穴の直径は、140mm と 120mm です。



確認のために DCU-F131W を収めてみました。



完璧ですね。 苦労した甲斐がありました。(⌒〜⌒)




製作工程 〜ボルトを通す穴開け〜

まずは、天板、底板、背面板、前面バッフル板に、ボルトを通す位置に M6 のボルトが通る穴を開けます。穴の数は、板一枚あたり4箇所です。 M6 のボルトは、直径 6mm なので、余裕を持って 6.5mm の穴を開けました。



続いて、上で開けた穴にビッタリ合うように 側板に穴を開けていきます。 この作業が、技術的に一番難しいです。 穴の位置がずれていると、後でボルトが通らなくなります。 それと、直角に開けていかないといけないので、ドリルの垂直を取りながら徐々に開けていきます。 最終的には、直径 6.5mm、長さ 25mm くらいの穴を開けるのですが、いきなりそんな大きな穴を開けると まず失敗します。 それにハンドドリルが火を噴きます。(°Д°;) 一旦 3mm の穴を開けてから、4.5mm、6.5mm と広げていきました。




製作工程 〜組み立て・完成〜

穴あけが終わったら 仮組です。 この時点でボルトが通らなかったりしたら 最悪です。 修正できたらラッキーですかね。 私の場合、ちょっときつい穴もありましたが、問題なく全部ボルトを止めることができました。



アルミ板の保護用プラスティックシートを剥いで、アルミとアルミの間にダイソーで買った 1mm 厚くらいのフエルトシートを緩衝材代わりに入れて、本組みしました。 DCU-F131W(ダンベル付き) を収納して完成です。 DCU-F131W は、エンクロージャーには固定しないで 中に浮いている状態になっています。



DCU-F131W とバッフル板の間には、緩衝材として、ダイソーで買ったフロアーマットをリング状に切って入れました。 価格は、60cmx30cmx1cm くらいの大きさで たったの 100円 です。。。激安。(⌒o⌒)



フロアーマットは、ダイソーで売っているコンパスカッターで簡単にリング状に切れます。




音質について その一 : 吸音材を全く入れないで聴いた感じ

エンクロージャーがアルミなので そうとう中で反響するんだろうと思っていたのですが、聴いた感じ反響音は全く気になりませんでした。 下図が、正面、中心軸上 30cm の所で計測したインパルス応答の波形(拡大)です。
以降、全てのグラフは、サンプリング周波数 192kHz で測定しています。



右図が、上のインパルス応答のパワースペクトルと位相特性です。 目立って大きなスパイクやディップはないので、ひどい共振や反射は起こっていないようですが、細かいスパイクはたくさん見られます。




音質について その弐 : 吸音材にフエルトを入れてみた場合

これだったら、大して吸音材を入れなくても大丈夫と思って、軽めにフエルトを内壁に貼ってみました。 右図が、正面、中心軸上 30cm の所で計測したパワースペクトルと位相特性です。 黄色の線が何もしていない場合。赤色の線が 後面にだけ貼った場合、水色の線がすべての面に貼った場合です。 1kHz 〜 3kHz あたりのスパイクとディップがわずかに軽減されています。
聴いた感じ、違いは全く分かりませんでした。(⌒〜⌒)




音質について その参 : 吸音材にふかふかフロアーマットを入れた場合

最終的には背面のみに反射防止に吸音材を貼ることにして、ダイソーでふかふかのフロアーマットを買ってきました。 一枚 100円 ですよ。



右図が、吸音材として上のフロアーマットを使った場合のパワースペクトルと位相特性です。 黄色の線が吸音材を何も入れていない場合、赤色の線がフロアーマットを貼った場合です。 フロアーマットは、背面のみに貼っています。 ふかふかマットのおかげで、スパイクとディップが抑えられて 良い感じになりました。o(^O^)o




音質について その四 : 周波数特性と補正フィルタ

右図が、Audio Processor で使う音響補正用のフィルタのパワースペクトルと位相特性です。 赤色の線がスピーカーの特性、緑色の線が補正フィルタの特性、白色の線が 補正後にスピーカーから出てくる音の特性(理論値)です。 補正フィルタは、20kHz 以上をカットするように作成しました。 パワー特性も位相特性も 綺麗にフラットに補正されています。\(^O^)/



注意深く観ると、600Hz と 1200Hz のところにパワーの急変と位相の不連続があるのが分かります。 計算してみると、距離にして 56cm。。。う、エンクロージャーのサイズの 28cm の丁度倍です。。。反射で決定。( ̄∀ ̄) 補正無しで聴いても全く気にならないので 特に対策は必要なさそうです。

実際に Audio Processor を使って音楽等を聴くときは、上記の補正フィルタだけを使うのではなく、イコライザーも使って聴く音に合わせて心地よい特性に調整しています。




結論

補正フィルタも合わせると、多分 フルレンジで達成可能な最高のものができたと思っています。 もう大満足です。o(≧∇≦)o
しばらくは、このままで良いかな。。。( ´ ▽ ` )ノ

将来は、振動ユニットをコアキシャルの 2WAY に変えて、Audio Processor でネットワーク処理までしてやろうと考えています。。。が、先の話ですね。(⌒〜⌒)